また経営に関してだけでなく、人間の営み全般に通じる普遍的な事柄についても松下幸之助は深く思いめぐらせていた。戦後、驚異的なインフラに見舞われており、松下電器も生産すればするほど赤字の出る生産構造にはまっていた折、幸之助は熟考の末に「繁栄こそが幸福で平和な生活をもたらすものである。今の日本ではその繁栄をもたらす理念が認識されていないから平和な社会が築けないのだ」という思想にいたる。「繁栄によって乎和と幸福を」。これを実現しなければ、国家も安定せず、まして会社も安定することはない。――この理念は、「PHP」(Peace
and Happiness through Prosperity)という頭文字に集約されて、実現方法の研究へと動き出すことになる。広く理念を普及させる機関として「PHP研究所」が創設された。勉強会や講演会が開催され、機関誌「PHP」も創刊された。松下幸之助みずからもPHP運動に精力を注いだ。
ここにおいて、思想家としても広く愛される松下幸之助がある。